1. 金融資産の評価とは?
企業は、事業活動を通じてさまざまな金融資産を保有します。代表的なものとして、現金預金、売掛金、貸付金、株式、債券などが挙げられます。
これらの金融資産について、決算日にいくらの金額で貸借対照表に計上するかを決定することが、金融資産の評価(Measurement of Financial Assets)です。
特に有価証券(Securities)については、取得した目的や金融商品の性質によって評価方法が異なります。
例えば、同じ株式であっても、短期的な売買利益を得るために保有している場合と、長期的な投資目的で保有している場合とでは、評価差額の会計処理が異なります。
したがって、有価証券の評価を理解するためには、まず保有目的による分類を理解する必要があります。
重要英単語
| 英語 | 日本語 |
|---|---|
| Financial assets | 金融資産 |
| Financial liabilities | 金融負債 |
| Measurement | 評価・測定 |
| Securities | 有価証券 |
| Equity securities | 株式 |
| Debt securities | 債券 |
| Carrying amount | 帳簿価額 |
| Fair value | 公正価値・時価 |
| Acquisition cost | 取得原価 |
| Unrealized gain | 未実現利益・評価益 |
| Unrealized loss | 未実現損失・評価損 |
2. 有価証券の保有目的による分類
日本基準では、有価証券は保有目的等に応じて、基本的に次の4つに分類されます。
- 売買目的有価証券(Trading Securities)
- 満期保有目的の債券(Held-to-Maturity Bonds)
- 子会社株式及び関連会社株式(Shares in Subsidiaries and Associates)
- その他有価証券(Other Securities)
重要なのは、単に株式や債券という金融商品の種類だけでなく、企業がどのような目的で保有しているかによって会計処理が変わるという点です。
2-1. 売買目的有価証券(Trading Securities)
売買目的有価証券とは、短期的な価格変動による利益を得ることを目的として保有する有価証券です。
例えば、企業が株式を100万円で購入し、決算日における時価が120万円になった場合、20万円の評価益を認識します。
評価方法
- 貸借対照表価額:時価(Fair Value)
- 評価差額:当期損益(Profit or Loss)
英文では、次のように表現できます。
Trading securities are measured at fair value, and changes in fair value are recognized in profit or loss.
(売買目的有価証券は時価で評価され、時価の変動額は損益として認識されます。)
この英文では、次の表現が重要です。
- be measured at ~:~で評価される
- changes in fair value:時価の変動
- be recognized in profit or loss:損益として認識される
特に、recognize A in profit or loss という表現は、会計英語で頻繁に使用されます。
2-2. 満期保有目的の債券(Held-to-Maturity Bonds)
満期保有目的の債券とは、満期まで保有する意図をもって取得した社債などの債券です。
株式には通常、満期という概念がありません。そのため、この分類の対象となるのは債券です。
例えば、額面金額1,000万円の社債を950万円で取得したとします。
この場合、取得価額と額面金額との差額50万円が金利の調整と認められるときは、償却原価法(Amortized Cost Method)によって処理します。
償却原価法とは、取得価額と額面金額との差額を、満期までの期間にわたって利息の調整として配分する方法です。
評価方法
- 基本的な評価基準:償却原価(Amortized Cost)
- 信用リスクに応じた予想信用損失(Expected Credit Loss)も考慮する
英文では、次のように表現できます。
Bonds held to maturity are measured at amortized cost, taking into account expected credit losses.
(満期保有目的の債券は、予想信用損失を考慮した償却原価で評価されます。)
ここで重要なのは、amortized cost という用語です。
amortize は「償却する」という意味の動詞であり、amortized cost は「償却原価」を意味します。
また、held to maturity は「満期まで保有される」という意味です。
2-3. 子会社株式及び関連会社株式(Shares in Subsidiaries and Associates)
企業が子会社や関連会社の株式を保有する場合、その投資は通常、短期的な売買利益を目的としたものではありません。
日本基準では、子会社株式及び関連会社株式は、取得原価(Acquisition Cost)をもって貸借対照表価額とします。
評価方法
- 貸借対照表価額:取得原価(Cost)
英文では、次のように表現できます。
Investments in subsidiaries and associates are generally measured at cost in separate financial statements.
(個別財務諸表において、子会社及び関連会社への投資は、原則として取得原価で評価されます。)
ここで注意したいのは、個別財務諸表(Separate Financial Statements)と連結財務諸表(Consolidated Financial Statements)の違いです。
連結財務諸表では、子会社株式は連結上の投資と資本の相殺消去などの処理が行われます。また、関連会社株式については持分法(Equity Method)が適用される場合があります。
したがって、個別財務諸表における取得原価評価と、連結財務諸表における処理を混同しないようにしましょう。
2-4. その他有価証券(Other Securities)
その他有価証券とは、上記のいずれにも該当しない有価証券です。
例えば、長期的な資金運用や取引関係の維持などを目的として保有する株式などが該当します。
日本基準では、原則として時価で評価します。
ただし、売買目的有価証券とは異なり、評価差額の全部をそのまま当期損益に計上するわけではありません。
評価方法
- 貸借対照表価額:時価(Fair Value)
- 評価差額:原則として純資産の部に計上
評価差額の処理には、次の2つの方法があります。
- 評価差額の合計額を純資産の部に計上する方法
- 時価が取得原価を上回る銘柄の評価差額は純資産に計上し、下回る銘柄の評価差額は当期損失として処理する方法
また、純資産に計上される評価差額については、税効果会計も考慮します。
英文では、次のように表現できます。
Unrealized gains and losses on other securities are generally recognized in net assets rather than in profit or loss.
(その他有価証券の未実現評価益及び評価損は、原則として損益ではなく純資産に認識されます。)
重要なのは、unrealized gain and loss(未実現評価益・評価損)という表現です。
実際に売却して利益が確定したわけではなく、期末時点の時価と取得原価との差額を認識していることを表しています。
3. 有価証券の評価方法の比較
ここまでの内容を整理すると、次のようになります。
| 分類 | 貸借対照表価額 | 評価差額の処理 |
|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 時価 | 当期損益 |
| 満期保有目的の債券 | 償却原価 | 原則として利息調整等に反映 |
| 子会社・関連会社株式 | 取得原価 | 原則として評価差額を認識しない |
| その他有価証券 | 時価 | 原則として純資産 |
※上表は日本基準の基本的な分類と処理を示しています。満期保有目的の債券については予想信用損失に基づく貸倒引当金も考慮します。また、著しい時価下落や実質価額の著しい低下など、減損に関する例外的な処理があります。
4. IFRS第9号における金融資産の評価
ここまでは日本基準を中心に解説しましたが、国際財務報告基準(IFRS)では、IFRS第9号「金融商品」(Financial Instruments)において金融資産の分類と測定が定められています。
IFRS第9号では、金融資産の分類にあたり、主に次の2つの要素を考慮します。
- 事業モデル(Business Model)
- 契約上のキャッシュ・フローの特性(Contractual Cash Flow Characteristics)
金融資産は、基本的に次の3つの測定カテゴリーに分類されます。
4-1. 償却原価(Amortized Cost)
契約上のキャッシュ・フローを回収することを目的とする事業モデルで保有され、かつ、契約上のキャッシュ・フローが元本及び利息の支払いのみである金融資産は、償却原価で測定されます。
この条件は、SPPI(Solely Payments of Principal and Interest)と呼ばれます。
英文:
A financial asset is measured at amortized cost if it is held to collect contractual cash flows and its contractual cash flows represent solely payments of principal and interest.
(金融資産は、契約上のキャッシュ・フローを回収する目的で保有され、そのキャッシュ・フローが元本及び利息の支払いのみである場合、償却原価で測定されます。)
重要表現:
- held to collect:回収する目的で保有される
- contractual cash flows:契約上のキャッシュ・フロー
- solely:もっぱら、~のみ
- principal:元本
- interest:利息
4-2. その他の包括利益を通じた公正価値測定(FVOCI)
契約上のキャッシュ・フローの回収と金融資産の売却の両方によって目的が達成される事業モデルで保有され、SPPI要件を満たす債券などは、FVOCIに分類されます。
FVOCIは、Fair Value Through Other Comprehensive Income の略称です。
日本語では「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産」と表現されます。
この分類では、金融資産を公正価値で測定し、原則として評価変動額をその他の包括利益(Other Comprehensive Income:OCI)に認識します。
英文:
Changes in the fair value of debt instruments measured at FVOCI are recognized in other comprehensive income.
(FVOCIで測定される債務性金融商品については、公正価値の変動額がその他の包括利益に認識されます。)
なお、債券のFVOCIでは、売却時に累積されたその他の包括利益を損益に振り替える処理(Recycling)が行われます。
4-3. 純損益を通じた公正価値測定(FVTPL)
上記の償却原価及びFVOCIの条件を満たさない金融資産は、原則としてFVTPLに分類されます。
FVTPLは、Fair Value Through Profit or Loss の略称です。
この分類では、公正価値の変動額を当期損益に認識します。
英文:
Financial assets measured at FVTPL are remeasured at fair value, with changes in fair value recognized in profit or loss.
(FVTPLで測定される金融資産は公正価値で再測定され、その変動額は損益として認識されます。)
4-4. IFRSにおける株式投資の取扱い
株式などの資本性金融商品(Equity Instruments)については、債券とは異なる取扱いがあります。
IFRS第9号では、株式投資は原則としてFVTPLに分類されます。
ただし、売買目的で保有していない株式については、当初認識時に、投資ごとに公正価値の変動をOCIに表示する選択(FVOCI Election)が認められています。
この選択を行った場合、重要な特徴として次の点があります。
- 公正価値の変動はOCIに認識する。
- 配当金は原則として損益に認識する。
- 売却時に累積したOCIを損益に振り替えない(Non-recycling)。
つまり、債券のFVOCIと株式のFVOCIでは、売却時の会計処理が異なります。
この違いは、試験対策として非常に重要です。
5. 日本基準とIFRSの比較
日本基準とIFRSでは、金融資産の分類方法や評価差額の処理に違いがあります。
| 比較項目 | 日本基準 | IFRS第9号 |
|---|---|---|
| 分類の基本的な考え方 | 保有目的等による分類 | 事業モデルとSPPI要件 |
| 売買目的の株式 | 時価・損益 | FVTPL |
| 満期保有目的の債券 | 償却原価 | 条件を満たせば償却原価 |
| その他の株式 | 原則として時価・純資産 | 原則FVTPL、一定の場合FVOCI選択可 |
| 債券のFVOCI | その他有価証券等とは異なる分類体系 | 独立した測定カテゴリー |
日本基準の「その他有価証券」とIFRSの「FVOCI」は、どちらも時価変動を純資産・OCIに反映する場合があるため、似ているように見えます。
しかし、両者は分類の考え方も、対象となる金融資産も、売却時の処理も完全に同じではありません。
特に、IFRSでは債券のFVOCIと株式のFVOCIで、売却時のOCIの振替処理が異なることを覚えておきましょう。
6. 有価証券の評価に関する重要英文・例文
ここでは、公認会計士試験の英文問題や英文会計の学習で役立つ表現を整理します。
例文1:時価評価
Securities held for trading purposes are measured at fair value.
売買目的で保有する有価証券は時価で評価されます。
- held for trading purposes:売買目的で保有される
- be measured at fair value:時価で評価される
例文2:評価差額の認識
Unrealized gains and losses are recognized in profit or loss.
未実現評価益及び評価損は損益として認識されます。
- unrealized:未実現の
- gains and losses:利益及び損失
- be recognized in:~に認識される
例文3:満期保有目的
An entity intends to hold the bonds until their maturity dates.
企業は、その債券を満期日まで保有する意図を有しています。
- intend to do:~する意図がある
- hold A until ~:Aを~まで保有する
- maturity date:満期日
例文4:償却原価
The difference between the acquisition cost and the face value is amortized over the remaining term of the bond.
取得原価と額面金額との差額は、債券の残存期間にわたって償却されます。
- difference between A and B:AとBの差額
- face value:額面金額
- amortize:償却する
- remaining term:残存期間
例文5:その他の包括利益
Changes in the fair value of certain financial assets are recognized in other comprehensive income.
一定の金融資産の公正価値の変動は、その他の包括利益に認識されます。
- certain:一定の
- changes in fair value:公正価値の変動
- other comprehensive income:その他の包括利益
7. 公認会計士試験対策:確認問題
ここまでの内容を理解できているか、英文問題で確認してみましょう。
Question 1
Which of the following securities is generally measured at fair value through profit or loss under Japanese GAAP?
A. Held-to-maturity bonds
B. Trading securities
C. Shares in subsidiaries
D. Shares in associates
正解:B
解説:
売買目的有価証券(Trading Securities)は、時価で評価し、その評価差額を当期損益として処理します。
Question 2
Under IFRS 9, which of the following conditions must be met for a financial asset to be measured at amortized cost?
A. The asset must be held for trading purposes.
B. The asset must be held to collect contractual cash flows, and those cash flows must represent solely payments of principal and interest.
C. The asset must be classified as an equity instrument.
D. The asset must be measured at fair value through other comprehensive income.
正解:B
解説:
IFRS第9号では、償却原価で測定するためには、事業モデル要件とSPPI要件の両方を満たす必要があります。
Question 3
Under IFRS 9, what is the treatment of accumulated gains or losses recognized in OCI when an equity investment designated at FVOCI is sold?
A. They are reclassified to profit or loss.
B. They are reclassified to retained earnings.
C. They are reclassified to revenue.
D. They are always recognized as impairment losses.
正解:B
解説:
株式投資についてFVOCIを選択した場合、売却時に累積したOCIを損益に振り替えることは認められません。ただし、資本の内部振替として利益剰余金などに振り替えることは可能です。
したがって、AではなくBが正解です。
8. まとめ:有価証券の評価で押さえるべきポイント
有価証券の評価を理解するうえでは、保有目的や金融商品の性質に応じて、評価方法と評価差額の認識先が異なることを理解する必要があります。
特に重要なのは次のポイントです。
- 売買目的有価証券は時価評価し、評価差額を当期損益に認識する。
- 満期保有目的の債券は償却原価を基本とする。
- 子会社株式及び関連会社株式は、日本基準の個別財務諸表では取得原価を基本とする。
- その他有価証券は時価評価し、評価差額を原則として純資産に計上する。
- IFRS第9号では、金融資産をAmortized Cost、FVOCI、FVTPLに分類する。
- IFRSの株式FVOCIでは、売却時に累積OCIを損益に振り替えない。
また、英語学習では、次の表現を確実に理解しておきましょう。
- measured at fair value:時価で評価される
- measured at amortized cost:償却原価で評価される
- recognized in profit or loss:損益に認識される
- recognized in other comprehensive income:その他の包括利益に認識される
- held to maturity:満期まで保有される
- contractual cash flows:契約上のキャッシュ・フロー
有価証券の評価は、金融商品会計の中でも重要なテーマです。日本基準とIFRSの共通点・相違点を理解するとともに、英文で会計処理を説明できるように練習しておきましょう。
